2010年代以降はフラッグシップとしてJVMが登場、JCM800や1959を筆頭とするヴィンテージマーシャルがリイシューとして新たに名を連ねます。新製品としてオールドスクールなルックスを持つASTORIA、完全デジタルのCODEなどが登場し、かつてないほどマーシャルのラインナップは多岐に渡っています。
マーシャルのフラッグシップモデルとしてJCM2000に代わり登場したJVMシリーズ。2チャンネル、4チャンネルの2種をラインナップし、従来のマーシャルの音を再現して幾通りもの音が出せる、新時代のマーシャルアンプとなっています。
JVM410H
4チャンネルの410、2チャンネルの210、205。50Wの205と100Wの410、210。異なる仕様を含む4機種がラインナップされました。サウンドのベーシックな部分は歴代マーシャルの中でも最も支持された2203、1959プレキシ。その上で、ミニスイッチにより、各チャンネル毎に3つずつのサウンドバリエーションを持たせ、歴代マーシャルのほぼ全てのサウンドをプログラムできるようになっています。現代的な仕様を最大限に使ったチューブアンプで、新時代のマーシャルを体現するアンプとなっています。
この中でもJVM410HSだけは異色の存在で、ジョー・サトリアーニのシグネイチャーモデルとなっています。ノイズゲートが装備されたほか、サウンドの傾向もやや通常版と異なっています。
DSLシリーズ
従来のJCM2000 DSL100をモデルとして引き継いだもの。JCMの遺伝子を直系で受け継いでいるのはJVMよりもこちらと言えます。
DSL100H
JCM2000のDSL100モデルをそのまま継承したモデル。1Wから100Wまで幅広い出力のものをラインナップし、1W、5W、20Wのモデルではコンボアンプも展開。値段も抑えられ、自宅での練習などにも気軽に取り入れられるようになりました。フラッグシップの地位こそJVMに譲り渡りましたが、JCMのサウンドをそのまま体現し、優秀なモデルとなって再登場したと言えるでしょう。
Marshall DSL1H
Marshall DSL1C
Marshall DSL5C
Marshall DSL20H
Marshall DSL20C
Marshall DSL40C
Marshall DSL100H
DSL1H | DSL1C | DSL5C | DSL20H | DSL20C | |
形態 | アンプヘッド | コンボアンプ | コンボアンプ | アンプヘッド | コンボアンプ |
出力 | 1W / 0.1W | 1W / 0.1W | 5W / 0.5W | 20W / 10W | 20W / 10W |
チャンネル数 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
スピーカー | – | Celestion Eight-15 × 1 | Celestion Ten-30 × 1 | – | Celestion Seventy-80 × 1 |
真空管 | プリ:2 x ECC83 パワー:1 x ECC82 |
プリ:2 x ECC83 パワー:1 x ECC82 |
プリ:3 x ECC83 パワー:1 x ECC99 |
プリ:3 x ECC83 パワー:1 x ECC83, 1 x EL34 |
プリ:3 x ECC83 パワー:1 x ECC83, 1 x EL34 |
DEEPスイッチ | – | – | ◯ | – | – |
PRESENCE、RESONANCE | – | – | – | ◯ | ◯ |
フットスイッチ | 1way | 1way | 2way | 2way | 2way |
価格 | 33,000 | 40,000 | 55,000 | 60,000 | 70,000 |
表:復刻DSLシリーズ5機種の比較(価格は2018/3時点)
歴史的銘機として語られている有名な機種を復刻してあらたにラインナップ。2000年代以降高まるヴィンテージ志向にも対応し、ますます人気の高まるシリーズです。
マーシャルの記念すべき初号機JTM45の復刻版。外観も全く同じとし、今となってはローゲインながらも粘っこくウォームな中域が特徴的なサウンドもオリジナル通りです。30W仕様。
マーシャルの代名詞「1959 SUPER LEAD 100」はカリスマ的人気ゆえに常にリイシューの対象となってきています。93年の「1959SLP」、05年の「1959HW」に続き、2017年現在の現行品となる1959リイシューがこのハンドワイヤードシリーズ「1959SLP」。本質的には05年版の1959HWをベースとした仕様となり、マーシャルのスタッフが状態の良い2台のオリジナル1959プレキシを参考とし、新たに作り上げたという曰くを持つモデルです。プリント基板であった93年版とはまるで違う完全ハンドワイアードで、オリジナルを完全に復刻。現代的な仕様としてエフェクトループを追加し、実用面も考えられたリイシューとなりました。
Marshall 1962 Bluesbreaker Combo Amplifier Review | Guitar Interactive Magazine
エリック・クラプトンの使用で有名となった「1962 Bluesbreaker」の復刻。オリジナル同様30Wのコンボアンプで、25ワットの12インチセレッションG12-Mグリーンバックを2台搭載しています。当時のブルースロックの代表的なサウンドがここに凝縮されており、復刻が待たれていたモデルでもあります。
1959の50ワット版とも言える1987は、1959と兄弟機という位置づけも出来ます。こちらもオリジナルにはなかったエフェクトループを搭載。
1987年、当時隆盛を誇っていたJCM800の2203、2204をベースとして、よりハイゲインに振ったモデルが限定発売されます。3年後に登場するJCM900の布石とも言えるこのモデルは「2555 Jubilee」と名付けられ、限定発売ゆえに伝説的なアンプとされ、現在まで語られています。
「2555X Silver Jubilee」として復刻された当モデルは、オリジナルにあった50Wと100Wの切替こそできませんが、音色の傾向をほぼ同じとし、正確に復刻されています。マーシャルのアンプでも珍しいシルバーの外観もまた特別感を強く感じさせます。
マーシャル 2555X シルバー ジュビリー
JCMの名が残るリイシューのシリーズ。現在は1機種のみ。JCMの系統中、最大のヒットを記録した「JCM800」が復刻されています。
4機種あったJCM800の中でも特に人気の「2203」をそのまま復刻したモデル。80年代より続くハードロックの代表的なサウンドがそのまま得られるため、JCM中でも特に根強い人気を誇ります。
プリント基板を使用せず、全て手作業で結線されたシリーズ。プリント基板が使われていなかった時代のヴィンテージマーシャルの復刻を手作業で行っているもので、現在オリジナルが入手不可能となっているレアなモデルを中心に復刻が進められました。内部の部品、結線から電源トランスに至るまで、可能な限りオリジナルに忠実に再現されています。
60年代終わり頃から70年代の初めにかけて製造された「2061」の完全復刻。73年頃まで実際に製造されていましたが、大音量化の波に飲まれて消え去ってしまい、今では幻の銘機として語られることが多いモデルです。元々、1962に近い粘っこいクランチトーンを信条とするヴィンテージマーシャルですが、整流管に真空管は使用されず、シリコンダイオードが使用され、ややモダンなスペックを持つのが特徴。
20Wというマーシャルにしては控えめとも言えるワット数ですが、PA使用が前提である現代のライヴ事情であれば、十分実用に耐える音量であり、90年代にピークを迎えたハイゲイン信仰も一段落。まさに復刻されるべくして復刻したといえるモデルです。
Marshall Handwired 1962HW – Product Demo
「1962コンボ」の復刻版。内部のスピーカーには25ワットの12インチセレッションG12-Cグリーンバックを2つ搭載。キャビネットのサイズがオリジナルよりも若干大きめになっていますが、前述のVintageシリーズのもの以上に、よりオリジナルに近いサウンドを実現しています。
Marshall Handwired 2245THW – Product Demo
ブルースブレイカーの愛称で知られるコンボアンプ「1962」のアンプヘッド版で、オリジナルは現在見かけることがほとんどないレアなもの。オリジナルはマーシャルの第一号機「JTM45」をベースとしており、このリイシュー版もまた同様。モデル名が「2245」となっているのはそれが由来です。スピーカーがない以外は「1962HW」と全く同じ仕様。
Marshall Handwired 1958X – Product Demo
オリジナルの「1958」は1968年~72年の間に製造されていました。2×10インチ、18ワットのコンボアンプで、「1962」の系譜を引き継ぐものです。10インチのセレッションG10F-15グリーンバックが2台搭載され、オリジナルの枯れたスピーカーを新品の状態から再現出来るようにエイジングされています。18ワットと比較的低出力ゆえに、ボリュームを上げて真空管をドライブさせやすいのは何よりの魅力。オリジナルに搭載されていたトレモロもそのまま引き継がれています。
Marshall Handwired 1973X – Product Demo
1966年~68年に製造されたコンボアンプ。上の「1958」よりも以前に製作されていたモデルということになりますが、スピーカーが2×12インチであるところから、より大型となっています。出力は1958同様18ワットで、真空管を使ったオリジナル同等のトレモロも搭載。スピーカーには12インチのセレッションG12M-20グリーンバックを2台。1958X同様にエイジングされています。
マーシャルが練習用アンプとして開発したシリーズ。サウンドはマーシャルの上位モデルを引き継ぎながら、練習用としてAUX IN端子やデジタルエフェクトを装備、はてはプログラムしてマルチエフェクター的使用が可能なモデルまであり、オールインワンモデルとして開発されています。練習用アンプとしての性質が強いモデルではありますが、大出力の50、100ワットのものなどはライブでも十二分に使用に耐えます。
4チャンネル仕様、エフェクト/リバーブ/3バンドEQ搭載、ゴールドパネルのゴージャスなルックスに自宅でのギター練習に最適な機能がいくつも搭載されたエントリーシリーズ。最下位の「MG10 Gold」は2チャンネルのみでエフェクト非搭載ながら1万円近辺の価格と、初めてのギターアンプとしても最適なモデル。最上位の「MG50FX Gold」では5種類のエフェクトの他にディレイだけで4種類が用意、エフェクトループを搭載するなど、より本格的な用途での使用が可能となっています。
MG10 Gold | MG15FX Gold | MG30FX Gold | MG50FX Gold | |
出力 | 10W | 15W | 30W | 50W |
チャンネル数 | 2 | 4 | 4 | 4 |
スピーカー | 1×6.5“ | 1×8“ | 1×10“ | 1×12“ |
3バンドEQ | X | ◯ | ◯ | ◯ |
リバーブ | X | ◯ | ◯ | ◯ |
エフェクト | X | 5種類 | 5種類 | 5種類 |
ディレイ | – | 1種類 | 1種類 | 4種類 |
エフェクトの同時使用 | – | 最大1つ | 最大1つ | 最大3つ |
エフェクトループ | – | – | – | 1系統 |
フットスイッチ | – | – | – | 付属 |
価格 | 10,800 | 23,760 | 29,160 | 51,840 |
表:MG Goldシリーズ4機種の比較(価格は2018/3時点)
エフェクト非搭載のもの。10ワットのMG10CFと15ワットのMG15CF、リバーブのみ使用可能なMG15CFRを展開。
エフェクト搭載、プログラム可能なシリーズ。15ワット~100ワットまでの6機種を展開。50ワットのMG50CFX以上のモデルについては、空間系エフェクトの中でもディレイが独立し、使い勝手が増しています。このモデルになると、1台で通常のライブ使用が可能で、100ワットのものについてはアンプヘッドも展開されています。
先に登場した「2555X Silver Jubilee」。オリジナルの「2555」は1987年、限定で発売されましたが、この2555をスモールサイズで復刻したモデルがこのシリーズ。オリジナルと同じくプリ管にECC84、パワー管にEL34を使用。
Miniの名の通り20ワットに出力を落としている上、5ワットと切り替えられる出力切替を搭載しているので、軽めのライブから自宅練習まで幅広い利用が可能です。アンプヘッドとコンボの二種が展開されており、銀の外装が威圧感を与えないので、自宅にも置きやすいデザインです。
1ワットの小さなマーシャル。バッテリー駆動ですが、パワフルなマーシャルの音を感じさせるのはさすがの一言。軽い練習用あるいは調度品としても最適な5色展開。MS-4のみ2段スタックとなっています。
従来のマーシャルの黒のレザーにゴールドパネルというルックスからかけ離れた、新しいマーシャルアンプのシリーズがこのASTORIA。渋いカラーに身を包んだ洒脱な外観には、60年代の初期にわずかに使われたレトロクラシカルなロゴを復活させて配置。今までのマーシャルのイメージに存在する高濃度の粗い歪みや大音量といった、ロック的な価値観を前面に押し出したシリーズとは明らかに違うのがはっきりと分かるものです。
内部はハンドワイヤリングとプリント基板が共存する独特の設計となっており、真空管には、プリ部がECC83、パワー部がKT66、整流管がGZ34を採用。全て本社工場で組み立てが行われ、メイドインイングランドの高い製品基準をクリアしています。
シリーズは3種からなり、ゲイン幅やチャンネル数など少しずつ違うスペックになっています。いずれも出力は30Wと5Wを選ぶことが出来るので、ライブ用のみならず、自宅用としても最適です。
クリーントーン専用で、外装はグリーン。プリ部だけのボリュームを制御するSENSITIVITYと、音の輪郭を制御し、全体の明暗を決定づけるEDGEという独特のコントロールを配しています。暖かみのあるクリーントーンはまさしくフルチューブならではのもので、エフェクターで歪みを作るギタリストや、ジャズ系のプレイヤーなどにも向いています。
GAIN、BOOSTを装備し、歪んだ音でソロも取るギタリストに向いた設計となるCUSTOM。外観はレッド。音の太さを制御するBODYや、20dbのゲインアップが可能なブーストスイッチを装備。トゥルーバイパスのエフェクトループも装備しているので、クラシカルなオーバードライブサウンドを得ながら、現代的な仕様の使いやすいアンプになっています。
暖かみのあるクリーントーンから、ハイゲインオーバードライブまで、幅広い音作りを可能とした2チャンネル仕様のASTORIA。色はブルー。CUSTOM同様にエフェクトループ、ブーストスイッチの代わりにチャンネル切替のスイッチを装備し、いずれもフットスイッチで制御可能。3機種中最も幅広い音作りが可能で、2チャンネル仕様というところもあり、最も汎用性の高いスペックです。
内部で音を作り出して、それをオーディオ的に出力するデジタルアンプ。LINE6社のSpider等に端を発する系統の製品ですが、CODEは今までこの分野にあまり触れてこなかったマーシャルが送り出すデジタルアンプで、内部に複数のアンプがモデリングされています。現在、
の5種類を展開。
オーディオ・ソフトウェアの会社であるSOFTUBE社とタッグを組んで作り上げたその音色は、14種類のプリアンプ、4種類のパワーアンプ、8種類のスピーカーキャビネットと、十分な量に登ります。内蔵エフェクトも多岐に渡り、コンプ、オーバードライブ、コーラス系、ディレイからオートワウ、ピッチシフターまで、至れり尽くせりの状態。
現代的な装備も完備しており、USB接続でPCへのオーディオインターフェース利用、Bluetoothでスマートフォンと接続し、遠隔操作やオーディオスピーカー利用も可能。専用フットコントローラーを別途購入し、プログラムの保存切替を行えばライブでも十分に使用可能と、自宅練習用の枠を越えて運用が出来ます。
自宅や部室に1台!Marshall CODE25 ロックギター王道サウンドが詰め込まれた ギターアンプ
プリ菅にECC83を、パワー管にEL34(EL84)を搭載し、伝統的な真空管マーシャルアンプの倍音豊かでリッチなサウンドはもちろんのこと、自宅でもボリュームをフルアップした時の迫力のサウンドが小音量でも得られるパワーリダクション回路を搭載、エフェクトループ搭載などモダンスペックを纏ったチューブアンプ・シリーズ。エフェクト非搭載のシングル・チャンネルという潔い仕様ながら、「1959SLP」や「JTM-45」など往年のマーシャルアンプのサウンドが、リーズナブルな価格で得られます。
ラインナップは
の5種類を展開。
マーシャルの音色について述べるとき、プレキシという単語と共に語られることは多々あります。プレキシマーシャルの音色は今や50年も前のものでありながら、今もなおエレクトリックギターの音色の一つの理想形を体現しています。しかし、それにとどまらず、その後のJCMシリーズも経て、マーシャルが常に新しい音の形を提案してきたことを忘れてはなりません。現在もまたASTORIAシリーズなどで、新しいアンプの形をユーザーに提案し続けています。これからもギタリスト達に愛される優れた製品を、我々に見せてくれることでしょう。
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