レオ・フェンダーが全面的に関わっていた黎明期のツイード期から、黄金のブラックフェイス期を経て、CBSに買収された低迷期。フェンダーはその歴史の中で様々なアンプを開発してきました。現行モデルは、過去モデルのリイシューを含めて現代的なデジタルアンプまで、時代に即したものが多数ラインナップされています。
Super-sonic Head&Combo
2007年に完成した、現在のフェンダーを象徴する一台。時代に合わせたハイゲインと、ヴィンテージ志向の美しく暖かみのある音を共存させ、使いやすいコントロールと操作性もあって、高い人気を誇ります。22ワットと60ワットの出力違いが2機種、ともにコンボとヘッドが両方リリースされており、コンボは12インチスピーカー2発、ヘッドはブラウンフェイス期のBlondeに近いルックスを持ち、あらゆるキャビネットと好相性の使いやすいモデルとなっています。
現代風ツイードの立ち位置を狙って、1996年誕生した新シリーズ。今では90年代以降のフェンダーを代表するアンプとなりました。使いやすい装備にクラシックな外観、リーズナブルな価格もあって、様々なミュージシャンに人気を博しています。特にシングルコイルのギターとの好相性で、昨今でもマイケル・ランドウなどのシグネイチャーモデルがリリースされています。
40ワットのDeluxe、60ワットのDevilleを軸として、よりクラシカルなサウンドとルックスのBlues Junior、低出力の練習用アンプという位置づけのPro Juniorなど、幅広いラインナップを誇ります。
Hot Rod Deluxe III | Hot Rod Deville III 212/410 | Blues junior III | Pro junior III | |
出力 | 40W | 60W | 15W | 15W |
真空管 | 12AX7 x3、6L6 x2 | 12AX7 x3、6L6 x2 | 12AX7 x3、EL84 ×2 | 12AX7 ×2、EL84 ×2 |
スピーカー | 12″ Celestion G12P-80 x1 | 212:12″ Celestion G12P-80×2 410:10″Special Design Eminence×4 |
12″ Lightning Bolt 12 x1 | 10″ Special Design Eminence x1 |
機能 | Brightスイッチ More Driveスイッチ エフェクトループ リバーブ |
同左 | リバーブ FATスイッチ |
– |
表:Hot Rodシリーズ5機種の比較
Hot Rod Deluxe III
Hot Rod Deville III 212
Hot Rod Deville III 410
Blues junior III
Pro junior III
過去の銘機を現代風に蘇らせたシリーズ。部品設計ともに完全復刻されたリイシューとは少し違い、あくまで当時のサウンドを今の作り方を使って狙ったもので、その分リーズナブルなのが魅力。当然ながらルックスなどは当時のままで、音色も往年の銘機を可能な限り再現しています。
Princeton、Deluxe、Twin、Vibrolux
68年製、銀パネルが印象的なシルバーフェイス初期の銘機を現代に蘇らせたシリーズ。Princeton、Deluxe、Twin、Vibroluxの4機種がラインナップされており、リバーブ部はもちろん、出力、コントロール類、ルックスともに当時のものを受け継いでいます。当時のものとの最大の差異は、スピーカーがセレッションになっているところです。
’68 Custom Princeton Reverb | ’68 Custom Deluxe Reverb | ’68 Custom Twin Reverb | ’68 Custom Vibrolux Reverb | |
出力 | 12W | 22W | 85W | 35W |
真空管 | 12AX7 ×3 12AT7 ×1 6V6 ×2 5AR4 ×1 |
12AX7 ×4 12AT7 ×2 6L6 ×2 5AR4 ×1 |
12AX7 ×4 12AT7 ×2 6L6 ×4 |
12AX7 ×4 12AT7 ×2 6L6 ×2 |
スピーカー | 10インチ Celestion TEN30 x1 | 10インチ Celestion G12V-70 x1 | 12インチ Celestion G12V-70 ×2 | 10インチ Celestion TEN30 x2 |
Middleコントロール | × | × | ○ | × |
表:’68 Customシリーズ4機種の比較
’68 Custom Princeton Reverb
’68 Custom Deluxe Reverb
’68 Custom Twin Reverb
’68 Custom Vibrolux Reverb
80年代に登場した練習用アンプSuper Champを現在に蘇らせたシリーズですが、当時のものとはかなり違っており、真空管アンプにデジタル部を加えたような現代風の設計が特徴です。シリーズの中、特にSuper Champ X2は中級者向け練習用アンプとして、大きな支持を獲得しています。プリ、パワー共に真空管内蔵ですが、その他の部分はデジタル化を推し進め、プリアンプ部には16種のモデリングを内蔵。その他15種のエフェクトも内蔵し、様々な音色を一台に封じ込めました。
Twin Reverb、Super Reverb、Deluxe Reverb、Princeton Reverb
フェンダーアンプの黄金時代、ブラックフェイス期のリイシューシリーズ。Super、Deluxe、Princeton、Twinの4機種、その他Twin Reverbの大型版65年製Twin Customを含む、全5機種がラインナップされています。上記の68年製Customの名が付くシリーズ以上に復刻にこだわりが見られ、組み立ては全てアメリカのフェンダー社の工場で行われ、スピーカーも当時と全く同じモデルとはまでは行かないまでも、同じJensen社のものを使用し、音色を近づけることを最優先として製作されています。その分、価格はやや上がりますが、それでも手が届きやすい価格帯に抑えられ、フェンダーファンには嬉しいシリーズでしょう。
’65 Twin Reverb | ’65 Super Reverb | ’65 Deluxe Reverb | ’65 Princeton Reverb | |
出力 | 85W | 45W | 22W | 12W |
スピーカー | 12インチ Jensen C-12K x2 | 10インチ Jensen P-10R Alnico x4 | 12インチ Jensen C-12K x1 | 10インチ Jensen C-10R x1 |
真空管 | 12AX7 x4 12AT7 x2 6L6 x4 |
12AX7 ×4 12AT7 ×2 6L6 ×2 5AR4 ×1 |
12AX7 ×4 12AT7 ×2 6V6 ×2 5AR4 ×1 |
12AX7 ×3 12AT7 ×1 6V6 ×2 5AR4 ×1 |
Middleコントロール | ○ | ○ | × | × |
表:Twin Reverb、Super Reverb、Deluxe Reverb、Princeton Reverb復刻モデルの比較
’65 Super Reverb
’65 Deluxe Reverb
’65 Princeton Reverb
’65 Twin Reverb
ツイード期の59年製Bassmanの復刻。この時期のBassmanはマーシャルの祖先となったという意味においても、ギターアンプの歴史の中で一種特別の意味合いを持ちます。このリイシューはそんな当時のBassmanを緻密に再現したもので、外観はもちろん、50、60年代と同じく、パイン単板を材料に使用し、スピーカーはオリジナルと同じJensen P10R。1990年に初のリイシューが完了して以来、25年以上もラインナップに載り続ける人気商品でもあります。
Mustang GT
フェンダーデジタルアンプの定番モデル。Mustang GTという大出力モデルとMustang Iという20ワットの練習用アンプのシリーズに分かれ、GTは40ワットから200ワットまでの3機種がラインナップされます。
GTは現代のデジタル志向を貪欲に取り入れた、ライブ使用可能なモデルとして送り出されており、アンプモデリングや内蔵エフェクトを使用したプリセットを保存でき、フットスイッチで切替が可能。上部には視認性の高いディスプレイを装備し、練習用としてルーパー機能やレコーディングも可能。その他、スマートフォンとの接続、Bluetoothスピーカーとしての使用、さらに世界初のWi-Fi内蔵アンプという触れ込みもあり、現在思いつく技術を全て詰め込んだような製品になっています。スピーカーにはCeletion製を搭載し、40ワット以上の大出力はライブ使用に十分に耐えるでしょう。
2019年3月に登場した「Mustang LT25」は、GTシリーズのアンプモデリングを継承した25Wコンボアンプ。初めてのギターアンプとしても最適なモデルです。
Mustang GTシリーズ
はじめてのアンプに!Fenderの小型デジタルアンプ 「Mustang LT25」 – エレキギター博士
モデリングではなく、オーバードライブチャンネル側の音色を複数選べるようにしたアンプがこのChampionシリーズ。一見、クリーンチャンネルとドライブチャンネルの2チャンネル仕様ですが、ドライブ側はクラシカルなオーバードライブから、ハードディストーションまでを別個の音色として4種内蔵しています。エフェクトはリバーブ、ディレイなどの空間系と、コーラス、トレモロなどモジュレーション系のみを内蔵。シンプルなだけに扱いやすく、初心者から上級者まで幅広くオススメできるアンプです。20ワットから100ワットまでの3機種がラインナップ。大出力モデルはライブで十分使える迫力です。
ドライブスイッチを付けた10ワットの練習用アンプ。最低限のコントロールと機能でありながら、音色はフェンダー直系であり、初心者にはもちろん、卓上で少し鳴らしたいといったニーズにも最適な小型アンプです。
ヴィンテージフェンダーとして最高の評価を誇る57年製のツイードを蘇らせたシリーズ。全製品においてカリフォルニア州のフェンダー工場でハンドワイヤリングでの製作、組み立てが行われ、スピーカーは独自設計の専用品をマウント。57年製ツイードと酷似した外装に身を包んだ、リイシュー最高峰のシリーズです。当時のオリジナルには存在しないラインアウト端子が増設されたり、あらたにプレゼンスコントロールが追加されるモデルもあり、純然たる復刻からもう一歩現代風の要素が加わり、使いやすくなっているところもポイントです。
現在、Champ、Deluxe、Pro、Twinの4機種をラインナップ。特にツイード時代のPro-Ampは今シリーズで初の復刻となり、15インチ1発で26ワットというオリジナルと同じ適度な出力で、使いやすいモデルです。
Patrick Sweany and Laur Joamets Demo the Fender ’57 Custom Pro-Amp | Fender
57 Custom Champ | 57 Custom Deluxe | 57 Custom Pro-Amp | 57 Custom Twin-Amp | |
出力 | 5W | 12W | 26W | 40W |
真空管 | 12AY7x1 + 12AX7x1、6V6 x1 | 12AY7x1 + 12AX7x1、6V6 x2 | 12AY7x1 + 12AX7×2、6V6 x2 | 12AY7×2 + 12AX7×2、6V6 x2 |
スピーカー | 8″ Weber Special Design x1 | 12 Eminence x1 | 15″ Fender Special Design x1 | 12 Eminence x2 |
チャンネル数 | 1 | 2 | 2 | 2 |
表:’57 Customシリーズ4機種の比較
2016年、Bassmanのデザインを元として新たに開発されたシリーズ。Bassという名が付くのはその由来に依るものだと思われます。
従来のチューブアンプの構造と現代の機能をミックスさせたような仕様になっており、コンボからヘッドまで、複数の出力によるモデルがラインナップされています。以下の4機種はいずれもヘッドとコンボ両方の展開です。また、専用のキャビネットも展開しています。
Fender Bassbreaker 18/30 Demo | Fender
Rumble Stage 800、Rumble Studio 40
2004年から始まったフェンダーのベース用アンプシリーズ。これまで計10種類のラインナップがリリースされてきた他、2018年に登場した最新モデル「Rumble Stage 800」「Rumble Studio 40」2機種は、Wifi機能/15種類のアンプモデル/40種類のエフェクト/チューナー/ルーパーなど多彩な機能を搭載した最新鋭のデジタル・ベースアンプとなっています。
ギターを弾かない、レオ・フェンダーが送り出したテレキャスターやストラトキャスター。今ではエレクトリックギターの定番中の定番ですが、本人がもっともこだわりを持って開発していたのはギターよりもアンプであったと言われています。そんな創業者の遺伝子の宿った充実のアンプ群。ギターを見る目とはまた違った目でフェンダーを覗いてみるのも面白いのではないでしょうか。
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