2011年に登場した未来のギターアンプ「KEMPER PROFILING AMPLIFIER(以下ケンパー)」。既存のアンプを物理的にコピーするプロファイリングという唯一無二の機能をもって、ギターアンプ業界を震撼させた製品です。ここ日本では2013年頃から話題になり、2015年あたりからプロ・アマ問わず導入されるようになりました。ケンパーの登場と時を同じくしてギターアンプ業界では新製品のリリースがめっきりと減ったのは偶然ではないでしょう。ケンパーの存在がギターアンプ界の世界地図を大きく書き換えたのは間違いありません。
完成されたアンプサウンドをコンパクトな機材で実現!KEMPER, strymon IRIDIUM, UAFX DREAM ’65, NUX Amp Academy 4つのアンプシミュレーター弾き比べ!
登場から10年以上。2020年以降に登場したアンプシミュレーターと比較しても遜色ない、クオリティの高いサウンド
KEMPERを…
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ケンパーは、真空管ギターアンプとキャビネット、キャビネットへのマイク配置を「プロファイル」することで、アンプ/キャビネット/マイクの振る舞いや音響特性をそのままキャプチャーしてしまうという次世代のアンプです。従来のマルチエフェクターやギター・プロセッサーで採用される”音声サンプリング”や”モデリング”などと違い、アンプや周辺器材の状態そのものを忠実にデータ化するというもので、理想的な環境でプロファイリングされたデータはオリジナルのアンプサウンドと遜色ない、全く同じと断言していい程のリアリティを実現しています。
Kemper Profiler Performance – Erlend Krauser plays the Profiler his way
ソロギターでもニュアンスを損なわない
Kemper Profiling Amplifier – Metal
迫真に迫る轟音サウンド
もうこうなったら8弦ギター弾いてみた!!
オケとの馴染み方も自然
「リグ」と呼ばれるアンプのコピーデータは、世界中のギタリストによって無数の種類がネット上にアップロードされており、それをダウンロードして使うことができます。600Wのパワーアンプを搭載したモデルであれば、そのままアンプヘッドとして使用可能。エフェクトを搭載し、マルチエフェクターを兼ねられることから、専用のコントローラーあるいはMIDIスイッチャーとともに運用することで、一台でサウンドの全てを賄えます。
入手が困難な伝説的ギターアンプ、フェンダーやマーシャルなどのヴィンテージ・チューブ・アンプ、100W大出力のアンプヘッドなどなど…ケンパーを手にいれることで、これらのサウンドがいくつでも手軽に持ち運びできます。
“モデリング”と”プロファイル”の違いについて見ていきましょう。
一斉を風靡したLine6 POD 2.0
モデリングは電信回路によって数々の名機と呼ばれるギターアンプを忠実に再現する技術です。マーシャルやフェンダー、VOXといったアンプをモデリングし、それを一つの機能として内蔵したアンプを「モデリングアンプ」と呼びます。例えば、Line6のPODシリーズを代表とするアンプシミュレーターに内蔵されているアンプ群も、ギター・プロセッサーの最高峰に位置するFractal Audio SystemsのAxe-Fxシリーズも、各メーカーのギターアンプを忠実にモデリングしたものになります。
プロファイルはターゲットとなるアンプの音響特性を特殊な技術を用いてそのまま写し取ってしまう、Kemper社の独自技術です。サウンドはもちろん、アンプ本体に使用しているパーツが持つ特性や挙動、マイクとの位置やキャビネットの特性など、セッティングや個体差までも正確にキャプチャーします。取り込んだデータは「Rig(リグ)」と呼ばれ、細かくエディットすることが可能です。
プロファイリングはプロファイルしたいギターアンプとキャビネットを用意し、キャビネットにマイキングをしてギターを繋げる必要があり、理想的なサウンドを得るためにはある程度の知識と機材が必要となります。しかしパソコン用の専用ソフトウェアを使えば、世界中のユーザーが作成したRigをダウンロードして使うことができます(後述)。
プロファイリングをするためには
といった機材が必要です。各機材を接続したらマイクをキャビネットの前に立ててマイキングを行います。その後、本体に用意されているrecordボタンを押すだけでプロファイリングが開始されます。プロファイリングはUFOの効果音やホワイトノイズなどをケンパーが出力し、ターゲットとするギターアンプのサウンドをキャプチャーします。プロファイルしたサウンドはいつでも呼び出すことが可能です。
ケンパーによるプロファイリングは以下の手順に沿って行われます。
まずは継続的なホワイトノイズを出してターゲットとするアンプの「周波数特性」を読み取っていきます。周波特性はアンプのゲインが上がるにつれて変化しますが、ケンパーはホワイトノイズの音量を段階的に上げていき、クリーンからドライブサウンドまで、アンプが作り出す全てのサウンドの周波数特性を読み取ります。
断続的なホワイトノイズを出してターゲットとするアンプの「歪むカーブ」を読み取っていきます。どのポイントから音が歪み始めるのか、どういった歪み方をするのか、といった点を解析します。
数学的な法則をベースに生成されたテストトーンを送り、そのアンプが持つ「音色」を読み取っていきます。また、スピーカー(キャビネット)やマイクの特性もここで読み取り、強調されます。
強弱付けてギターを弾くことで、歪みのニュアンスやタッチを整合する作業です。リファインはできるだけ慎重に、ゆっくりと行うのがポイントです。偏った弾き方をすると仕上がりが悪くなってしまうので注意しましょう。
ケンパーが出来ることをまとめてみました。
ケンパーによってプロファイリングされたサウンドは、実機と聴き分けるのが難しいほどクオリティが高いものです。出音はもちろん、音の歪み方からピッキングニュアンスまで、ほぼ全ての要素を正確にキャプチャーします。そんなハイクオリティなサウンドを「マイキング不要」でレコーディングあるいはライブパフォーマンスで気軽に使えるのが魅力です。パワーアンプ搭載モデルのKEMPERがあれば、ライブ時にスピーカー・キャビネットに接続して使うこともできます。パワーアンプ非搭載モデルのKEMPERでも大丈夫、ミキサーに直接送った信号が「キャビネットを通したアンプの音」そのものだからです。
実際にいくつかのRIGを使った演奏動画を聞いてみましょう。
まずはモダンハイゲイン・アンプヘッド「Diezel VH4」をプロファイリングしたRigを使っての演奏です。
Gretsch Electromaticシリーズを、ギター博士が弾いてみた!
0:10〜1:09
ZEMAITIS CUSTOM SHOP METAL FRONT CS24MF FR4Cを弾いてみた!
0:20〜1:24、
アルペジオの練習 6/6 【ギター博士】
Fender Twin ReverbをプロファイルしたRigで演奏
エリクサー OPTIWEBコーティング弦をギター博士が弾いてみた!
7:29〜8:13 Fender BASSMANをプロファイルしたRigで演奏
続いてフェンダーアンプをプロファイルしたもの。現在では入手困難なアンプサウンドもこの通り簡単に得られます。
ダウンロードしたRigは、GAINや3バンドEQを使って音作りすることもできます(後述)。
ケンパーは「Kemper Rig Manager」と呼ばれる専用ソフトウェアを使ってインターネット上に公開されているリグデータを読み込ませることができます。プロファイリングしたくても実機に触れる機会がない場合、リグをダウンロードしてUSB経由で送るだけで即座に使用することができるのです。実際プロファイリングは面倒ですし、ネット上に公開されている無料リグデータだけでも途方もなく膨大な量(2017年2月時点で10,299点)となっているので、アンプ選びに困ることはほとんどないと言っていいでしょう。
優れた機材と環境でプロファイリングした有料のリグも用意されていますが、基本的には無料で公開されており、高いクオリティのリグは幾らでも見つかります。またリグは日々追加されていくので、新しいアンプがないか頻繁にチェックしたくなります。
Rig Managerで「Diezel」と検索しただけでもご覧の通り。ハイエンド・アンプもどんどん選ぶことができる
プロファイリングしたデータは本体に保存され、ボタン一つで切り替えることができます。一度プロファイリングさえすれば、日頃から愛用しているマイアンプやスタジオに設置されている大型スタックアンプ、希少価値の高いブティック系アンプさえも持ち運ぶことができる訳です。事実上、ケンパー一台で複数の真空管ギターアンプを持ち運べることになります。
またケンパーが置いてあるスタジオやライブハウスでは、あらかじめ用意した自分のRigをUSBで経由するだけで鳴らすことができます。
プロファイリングはアンプの音作りを済ませてから行いますが、キャプチャーしたサウンドはケンパー本体のコントロールによってさらに細かく音作りをすることが可能です。ケンパー本体には「GAIN、BASS、MIDDLE、TREBBLE、VOLUME」といったパラメータを操作するツマミが搭載されているので、例えば、各コントロールをフラットにした状態でプロファイリングしたサウンドも、本体のコントロールを調整することでローをカットする/ハイをブーストする/歪みの量を減らす/VOLUMEツマミで音量を下げる、と実際のギターアンプと同じように音作りを追い込めます。
またモジュレーション/リバーブ/ディレイなど高品位なエフェクターが用意され、それぞれ個別にON/OFFできます。後からプラグインでエフェクトをかけることももちろんできますが、予めケンパー内でギターサウンドを仕上げておくこともできます。
ブリッジミュートを用いたリフの練習フレーズ【ギター博士】
ギターにはBOGNER Uberschallをプロファイリングしたリグで演奏、ベースも専用に用意されたメタル系リグで音作りしている。
意外と知られていませんが、ケンパーはベースアンプもプロファイルすることができます。プロファイリングはギターアンプと同じ手順で行い、キャプチャーするサウンドは実機と謙遜ありません。もちろん専用ソフトウェアを使ってベースアンプ系のRigをダウンロードすることもできます。ただし、「激しいスラップ奏法で使用するには不向き」とメーカーが公表しています。ピック弾きや指弾きなど、一般的な奏法で使用することをオススメします。
・布袋寅泰
・田原健一/Mr.Children
・TK/凛として時雨
・大村孝佳/BABYMETAL
・スティーヴ・ルカサー/TOTO
福山さんのバックバンドビンテージマーシャルとか使ってんかと思ったらまさかのケンパー
— Zemn(ゼン) (@Zen_Strato) August 21, 2015
最近見た中だとTKも布袋もヂスビズのギターもケンパーだしケンパーブームまじできてる
— さきし@ちょっくらアメリカ行ってくる (@studio_dog_110) June 14, 2015
https://twitter.com/stinghajime/status/607210270914510848
lynch.だっけ、あそこのギターの人もケンパー使ってるって言ってたな、Revoのギター作ってる人が
— めっし (@levante350) July 29, 2015
2018年7月現在のところ、大きく分けてアンプヘッド・タイプ/ラック・タイプの2種類が存在し、それぞれにパワーアンプ搭載/非搭載モデルが存在、合計4種類のラインナップとなっています。それぞれパワーアンプ搭載モデルの方が割高になっていますので、用途に合わせて選ぶと良いでしょう。
「POWER HEAD」はお馴染みのランチボックス・タイプで、600Wのパワーアンプが内蔵されています。オーディオインターフェースを経由してレコーディングできるのはもちろん、ギター用のスピーカーキャビネットに接続して実機のアンプヘッドとまったく同じ感覚で使用することができます。重量6kgと軽量なので、ケンパーを頻繁に持ち歩きたい方、ライブパフォーマンスで使いたい方にオススメです。
「HEAD」はパワーアンプ非搭載のモデルとなります。キャビネットに繋いで鳴らすためにはHEADと別にパワーアンプを用意する必要があるので注意しましょう。基本的な機能は備わっているため、レコーディングで使用するギタリスト向けとなります。
リアパネル上部が空洞になったパワーアンプ非搭載モデル。「POWER HEAD」にはこの部分にパワーアンプが搭載される。
KEMPER HEADを…
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3Uサイズのラックタイプとなります。「POWER RACK」は600Wのパワーアンプを内蔵しており、ゲインを除くノブのLED/エフェクト・セクションのノブを省略している他は上記のPOWERHEADと同等の機能を持っています。ラックでシステムを組んでいるギタリストにも良いでしょう。
「RACK」は3Uサイズのラックタイプ、パワーアンプ非搭載モデルです。レコーディングで使用するギタリスト向けとなります。
KEMPER RACKを…
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2019年9月に登場した「PROFILER STAGE」は、Kemperのすべての機能を網羅したフロアタイプ。上述のランチボックス・タイプやラック・タイプと全く同じ機能を使うことができながら、足元でコントロールできるというステージパフォーマンスに最適なモデルです。通常モデルには搭載されないエフェクトループを2系統装備しているのがポイントで、最大4つのエクスプレッション・ペダルの接続も可能。最高峰のアンプサウンドにエフェクトを組み合わせてのプレイが可能となります。
Kemper PROFILER STAGE – Supernice!エフェクター
Kemper専用キャビネット。パワーアンプを内蔵したProfiler Power Head / Profiler Power Rackなどで使用できる「KABINET」、アンプ無しのヘッド / ラック / Kemper Stageなどからキャビネットを駆動することができる「POWER KABINET」と2つのモデルが存在します。200Wのパワーアンプ内蔵、スピーカーにはCelestion社製カスタム・メイドによるフルレンジ・12インチ・スピーカー KEMPER KONE を搭載。19種類の有名なスピーカータイプを選択可能なほか、パラメータ設定により本来のギター・アンプ特性を忠実に再現します。
KEMPER KABINETを…
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POWER HEAD | HEAD | POWER RACK | RACK | |
エフェクト | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
600Wパワーアンプ | ◯ | X | ◯ | X |
カラー | ブラック | ブラック/ホワイト | ブラック | ブラック |
重量 | 6.50 kg | 5.32 kg | 6.18 kg | 5.00 kg |
価格 | ¥ 297,864 | ¥ 213,840 | ¥ 263,304 | ¥ 213,840 |
表:KEMPER4機種の比較(価格は2018/7時点:サウンドハウス調べ)
実機を用意せず高品質なアンプサウンドを得るには、これまではモデリングが一般的でした。しかしケンパーの登場で、プロファイリングという手法も見逃せなくなるでしょう。
Bluetooth機能を搭載したギターアンプ/スピーカー8選