今あえて選ぶ。ソリッドステート・ギターアンプ特集2020年5月6日

ソリッドステート・ギターアンプ

エレキギターのサウンドを作る上で、アンプにかかる比重はギター以上に大きいと言われます。それほどに重要なアンプですが、ギターアンプの世界では古くから真空管アンプ至上主義がまかり通り、ソリッドステートアンプは真空管アンプよりも下であるという認識が常につきまとっています。

しかし、昨今では技術の発達による音質の向上、運搬性を重視する風潮などが追い風となり、真空管の代替品ではなく、第一の選択肢となる例が多くなりつつあります。今回、王道の真空管アンプではなく、そんな優れたソリッドステートアンプに目を向けてみましょう。

ソリッドステートアンプとは?(特徴)

ギターアンプには大別して二種類あり、音量増幅の過程において、真空管を使用したアンプを「チューブ(真空管)アンプ」、トランジスタを使用したアンプを「ソリッドステート(トランジスタ)アンプ」と言います。

ソリッドステートアンプのメリットは?

真空管アンプは特に歪ませた時の奥行きや温かさ、そして音圧に独特の魅力があるため、ギターアンプはもっぱら真空管が一番であるという考え方がなされてきました。しかし、真空管アンプは、使う電力が大きく、壊れやすく、そして管自体に寿命がありメンテナンスが大変と言った欠点があります。

ソリッドステートアンプはその逆と言って良いでしょう。低電力で大出力を得ることができ、丈夫で動作が安定している、といったようなメリットがあります。同じ出力のアンプでも小型軽量を実現しやすく、市場に出回っている持ち運びやすい小型アンプはほぼ全てソリッドステートアンプです。

肝心の音色部分ですが、各社の努力や後述のモデリングの技術が発達してきたこともあり、真空管アンプとの差異は従来に比べると限りなく少なくなってきているのが実状(下記参照)。運用性に優れるソリッドステートアンプの優位性は年々増してきています。

サウンドの特徴は?

ソリッドステートアンプは冷たく硬質でバキッとした音色になりやすく、クリーントーンについては、それがガラス的な研ぎ澄まされた美しさに繋がるため、ポリスのアンディ・サマーズ氏などを始めとして、Roland JC-120などソリッドステートアンプを使用するギタリストも数多く存在します。しかし、歪ませた時には、チリチリした耳に障る成分や、音が割れたような不自然な歪み方をするものが多く、あまり高い評価を得ていないのが事実で、歪ませた音をメインとするギタリストほど真空管アンプにこだわる理由もそこにあります。


Blues Cube Guitar Amplifier performed by Davy Knowles and Roy Gaines

しかし、ローランドのTube Logicなどを始めとしてチューブアンプを独自にシミュレートするような技術は様々に研究されており、デジタル技術の劇的な進歩も相まって、現在ではソリッドステートでありながら、チューブらしい温かさや奥行きを備えたモデルは少なからず出てきています。サウンド面での両者の垣根は以前に比べるとずっと下がったと言えるでしょう。

デジタルモデリングアンプ

主に音色を作るためのメインとなるプリアンプ部分について、デジタル演算で音色を構築したものをデジタルモデリングアンプと呼んでいます。原理としては、ギターからの信号がアンプに入った際の各部位や真空管の挙動、キャビネットの振動などを計算し、実際のアンプに極めて近い振る舞いをバーチャルに作り出して、そこから音色を導き出すという方法で音を得ます。音が作られた後の増幅部分においてトランジスタが使われているものが大半なので、モデリングアンプもソリッドステートアンプの一種であることがほとんどです。

モデリングアンプはその原理上、大きなスペースを必要とせず、さらに真空管っぽい音色が比較的簡単に得られるため、小型軽量にしやすく、さらにまったく違うカラーを持つ複数の音色を切り替えて使えるものが多いのが特徴です。反面、従来より少なくなりましたが、”デジタル臭い”、”立ち上がりが遅い”といった短所を未だに指摘される向きもあります。

中には部分的に真空管が使われているような製品もあり、そのようなモデルは”ハイブリッド”などと呼称されることもあります。
《一台で複数のアンプ&エフェクト・サウンドを》モデリング・アンプの魅力

定番のソリッドステートアンプ

Roland Jazz Chorus JC-120

Roland JC-120

ローランドが世界に誇るソリッドステートアンプの定番。JC-120を筆頭にJC-40、JC-22などの出力違いモデルが複数ラインナップされますが、とくに代表機種のJC-120においては、音色の個体差が少なく、頑丈で大音量が得られるという特性から、国内のスタジオ、ライブハウスにおいて、設置されていないところはないというほど浸透しています。
音は良くも悪しくも硬くバキバキとした音色で、歪み感や粘り気は希薄。オーディオアンプ的な特性を持ち、エフェクターとの相性は抜群です。

Roland JC-120

Randall Warhead

元パンテラのギタリストであったダイムバッグ・ダレル氏のモデルにして、メタル系ソリッドステートアンプとしてもっとも有名なモデル。ダレル氏は立ち上がりの速さを求めて真空管タイプではなくソリッドステートにこだわっていた事で知られており、このアンプも極めて素早い立ち上がりに、真空管にはない冷たさが同居しており、メタリックでソリッドなサウンドが得られるモデルです(生産完了品)。

RANDALL RG1503

おすすめのソリッドステートアンプ(コンボタイプ)

YAMAHA THR-II

YAMAHA THR-IIシリーズ

ヤマハのロングセラーモデルTHRの二代目。5Wと10Wの二種がラインナップされ、横長のオーディオ機器的デザインは卓上に置いても嫌味にならない自然さを備えています。実はモデリングアンプであり、5種類のアンプモデルを切り替えて使用可能で、いずれもヤマハらしく、クセの無い使いやすい音にまとめられています。エフェクトも必要分を備え、その他にもAUX INやUSBインターフェース機能など、多彩な機能を内包。初心者から上級者まで、あらゆるギタリストにとって満足度の高い製品となっています。

《進化を遂げたデスクトップアンプ》YAMAHA「THR-II」レビュー! – エレキギター博士

VOX Pathfinder 10

VOX Pathfinder 10

VOXのラインナップ上もっとも安価なモデルにして、練習用アンプの定番となっているモデル。10Wの廉価アンプでありながら、ソリッドステートらしい澄んだクリーントーンは価格に見合わない高評価を得ています。オーバードライブスイッチによる歪んだ音色に関しては賛否分かれていますが、いずれにせよ価格以上なのは間違いなく、練習用としては十二分な完成度を誇ります。

VOX Pathfinder 10

Marshall MG10

Marshall MG10

MG10はマーシャルの練習用アンプとしてラインナップされるMGシリーズの最小モデル。ボリュームとゲイン、さらにContourというコントロールのみを搭載したシンプル設計ながら、クリーンとディストーションの2チャンネルを実現しています。マーシャルらしく歪んだ音に重点を置いて設計されており、その質は練習用としては十二分。金色のパネルにロックの象徴とも言えるマーシャルのロゴが入った外観は、小型であっても気分を盛り上げてくれます。

Marshall MG10

Marshall CODE 25

Marshall CODE 25

CODEはマーシャルのデジタルモデリングアンプのシリーズ。25WのCODE 25と50WのCODE 50がありますが、スピーカーの径と出力が違うだけで本質的な機能は同じです。マーシャル歴代の代表的製品、さらに歴史的銘機を含む14のプリアンプがモデリングされており、4種のパワーアンプに加えて、キャビネット部も大型スタックからコンボまで、歴代マーシャルの銘機がシミュレートされています。さらにマルチエフェクター顔負けなほどの膨大なエフェクトを搭載し、100のプリセットに保存可能。まさにこれだけで全てが賄える、オールインワンを地で行くアンプと言えるでしょう。発売当初からBluetoothを使ってのスマートフォンによる遠隔操作、外部オーディオの再生に対応し、専用フットコントローラーによるライブ使用も想定されています。

Marshall CODEシリーズ

Fender Mustang GTX

Mustang GTX50 Mustang GTX50

Mustangはフェンダーのデジタルアンプのシリーズ名であり、価格順にLT、GT、GTXというモデル名が付けられています。GTXは最高峰に位置するモデルで、下位モデルから受け継いだモデリングアンプやエフェクトのクオリティをさらにブラッシュアップさせ、スピーカーを含むキャビネット部分が一新されています。先行のMarshall CODEシリーズなどと同様、Bluetoothを使ってのオーディオ再生やスマートフォン経由での操作などが可能で、専用のフットコントローラーを合わせての、ライブでの使用を想定した作りになっています。

Fender Mustang GTX50

Fender Tonemaster

Tone Master Deluxe Reverb Tone Master Deluxe Reverb

歴史的銘機として名高い「Deluxe Reverb」、「Twin Reverb」をデジタル化したモデル。キャビネット部分やJensenが使用されたスピーカー部、そしてまったく同じコントロールにまとめられたパネル部など、一見してもオリジナルとほぼ変わらない見た目となっており、フェンダーを強く感じさせる佇まいをしています。オリジナルを模した”その音”しか出ないように作られており、多種類のアンプを切り替える一般的なモデリングアンプとは設計の思想がそもそも異なっています。重量や煩わしいメンテナンスなどの欠点をそのまま解消しつつ、可能な限りオリジナルに近い音色と外観を目指した結果生まれたモデルでしょう。

Fender Tone Master Deluxe Reverb
Fender Tone Master Twin Reverb

Roland JC-40 / JC-22

Roland JC-22 JC-22

冒頭で解説したJC-120の兄弟機。40W、22Wの小出力モデルながら、小型のライブハウスでは十分なほどの大音量が得られます。冷たく硬い音色はJC-120譲りでありながら、コーラスエフェクトの使い勝手、ディストーションコントロールなど、さらなる改善がされている箇所も。クセのないストレートな音色はエフェクターとの相性も良く、ギタープロセッサーなどのサウンドを再生するためのアンプとしても使えます。上位機種とほぼ同じ音色なので、自宅でJC-120のシミュレート用として使うことも可能です。

Roland JC-40
Roland JC-22

BOSS Nextone

BOSS Nextone Stage Nextone Stage

ローランドがBOSSブランドから放つ、2020年春の時点でもっとも新しいモデル。下に紹介する「Blues Cube」で実用化されたTube Logicテクノロジーが惜しみなく使われ、Blues Cube以上によく歪んだサウンドが得られるモデルとして登場しました。パワー管を選択することができ、それぞれサウンドに合わせた多彩なサウンドを得ることが可能。さらに専用アプリを使うことで、パワーアンプ内部の設定も細かく変えることができ、目標とする音色に追い込むことができます。出力の違いによる「Stage」と「Artist」の2機種がラインナップ。

BOSS Nextone

Roland Blues Cube

Roland Blues Cube

数あるソリッドステートアンプの中、もっともチューブ寄りの音色を実現した製品の1つがこのBlues Cubeです。ローランドが長年に渡る設計を重ねた末に実用化させたTube Logicを用いて設計されたアンプの音色は、限りなくチューブアンプに近い自然さや温かさを持ち、単なるチューブアンプの代替品以上の存在感を持つに至っています。外観から想像が付く通り、ツイード期フェンダーアンプをイメージしており、ハードな歪みは得られませんが、粘り気のあるクランチ系のトーンはまさに絶品。

真空管を搭載せずチューブサウンドを実現:Roland Blues Cubeとは? – エレキギター博士

DV MARK Little JAZZ / JAZZ 12

DV MARK JAZZ 12 JAZZ 12

ベースアンプを開発製造するMarkbassのギターブランドDV MARK。多彩な小型アンプを多数リリースし、昨今注目を集める存在です。JAZZシリーズを代表するLittle Jazz、JAZZ12は小型で軽量、大出力、まろやかな音色といったような共通点を持っています。最大の特徴はスピーカー付きアンプの中でトップクラスの小型軽量を誇るところ。ソリッドステートらしからぬ温かみのある音色を出せるところや、まったく歪まないといった特性から、その名前の通りジャズ系のプロミュージシャンから多く支持されている製品です。

DV MARK LITTLE JAZZ
DV MARK JAZZ 12

おすすめのソリッドステートアンプ(アンプヘッド)

Hughes & Kettner Black Spirit 200 / 200 Floor

Black Spirit 200

ヒュース&ケトナーの最新となるデジタルモデリングアンプ。アンプヘッドとしての「Spirit 200」に加え、足下でのスイッチングを可能にした「Spirit 200 Floor」、コンボアンプ版「Black Spirit 200 Combo」がラインナップされています。ヒュース&ケトナーらしい、落ち着いた冷たさを持つクリーンからエッジの立った攻撃的なハイゲインまで、優れた音質のモデルを4チャンネルに分けたアンプ部分、そして代表的空間エフェクトを網羅しています。基本的にキャビネットを繋ぎ、通常のアンプヘッドとして利用することになりますが、内部にはキャビネットエミュレーターを8種内蔵し、これだけで直接ライン出力もできるようになっています。200Wまでの大出力に対応しながら、3.6kg(Floorは4.1kg)の軽量に押さえられているのはさすがにソリッドステートアンプならではです。

Hughes&Kettner Black Spirit 200
Hughes & Kettner BLACK SPIRIT 200 FLOOR

BOSS KATANA Head MkII

BOSS KATANA Head

BOSSブランドのアンプシリーズを代表するKATANAの中でも、唯一となるアンプヘッド型のモデルがこのKATANA Head Mk2です。従来のままの5種のアンプモデルにさらに2種ずつのヴァリエーションが追加され、合計10種類の音色を使えるようになりましたが、いずれもBOSSらしく歪み系に重点を置いた、優等生的かつかっこいい音にまとめられています。デジタルアンプらしくエフェクトも多数内蔵され、外部接続系もほぼ網羅されたオールインワン型。ヘッド型でありスピーカーキャビネットとの接続が本来の姿ですが、単体でも30Wのコンボアンプとして機能します。自宅での練習から、スタジオやライブハウスでキャビネットを借りての運用まで幅広い使い方を考えることができます。

BOSS KATANAアンプ

One Control BJF-S66

One Control BJF-S66

1966年製ブラックフェイス期のフェンダーアンプを目標として作られたOne Controlの小型アンプ。クリーンとリードの2チャンネル仕様となっており、フェンダーらしいキラキラとしたクリーンから無骨なヴィンテージ系クランチまで、幅広い音色作りが可能。コントロールもオリジナルのフェンダーを意識したものになっており、エフェクトはトレモロとリバーブを装備。アナログ設計されたプリアンプならではの存在感ある音色、1.6kgの軽量ボディでありながら66Wの大出力は大いに魅力です。

One Control BJF-S66

DV MARK DV Micro 50 M

DV MARK DV Micro 50

50Wの大出力にして1.9kgの軽量を成し遂げたDV Markのアンプヘッド。製品のコンセプトは先に紹介した「Little JAZZ」などのコンボアンプをヘッド版にしたものという印象ですが、こちらのMicro 50 Mについては、クリーンとリードの2チャンネル仕様となっているところが最大の特徴です。それもリードチャンネルは中途半端な歪みにとどまらない強烈なハイゲインまでをカバーしており、特にメタリックな鋭いサウンドを得意としています。極小アンプヘッドは競合製品も多くなってきていますが、依然としてこのレベルのハイゲインが得られる2チャンネル仕様のものは他に例がなく、このモデルの大きな強みとなっています。

DV MARK MICRO50

Quilter 101 Reverb / Tone Block 202

Quilter 101 Reverb

ネット楽器店大手のサウンドハウスが代理店を務めるQuilterの放つ超小型アンプ。101は50W、202は200Wと、いずれもかなりの出力を持っていながら、横幅はいずれも20cm足らずにして、0.9kg、1.5kgの超軽量設計。フェンダーDeluxe Reverbの音をモチーフに設計されており、美しいクリーンから粘り気のある有機的な歪みまで、シングルチャンネルではありますが、使いやすい音を得ることができます。容易に持ち運べるサイズにして、この音色、出力が得られるモデルは滅多になく、練習とライブで同じアンプを使いたい場合には、大きな武器となり得るでしょう。

Quilter 101 REVERB
Quilter Tone Block 202


ソリッドステートアンプは再評価の向きが高まってきており、一昔前のようにソリッドステート=音が悪いという先入観では語れなくなっています。アンプ選びにはますます多岐に渡る選択肢が溢れてきていますが、利便性に優れたソリッドステートアンプもぜひ視野に入れていきたいところですね。